音響ピンセット 最終更新:2026年6月26日




図1. 音響ピンセットにより整列される微小粒子(撮影:中島)

音響ピンセット(Acoustic Tweezers)は、超音波などの音波が物体に及ぼす力を利用して、微小な粒子や細胞を非接触で操作する技術です。近年、マイクロ・ナノ工学、バイオエンジニアリング、医療技術などの分野で注目されており、従来の機械的な操作では困難であった微小スケールの物体制御を実現する新しいマニピュレーション技術として研究が進められています。音響ピンセットの基本原理は、音波が媒質中に形成する音響放射力(Acoustic Radiation Force)を利用することにあります。圧電素子などの振動子から発生させた超音波を制御することで、液体中に定在波や音響場を形成し、その中に存在する粒子や細胞に力を作用させます。音響場の設計や周波数、位相、振幅を適切に制御することで、対象物を捕捉・移動・整列させることが可能になります。ページ下にある動画は、直径2μmの粒子が超音波により整列される様子です。

音響ピンセットは、光ピンセットと比較して、より大きなサイズの対象物を扱えることや、不透明な媒質中でも利用できる可能性があることが特徴です。また、対象物へ直接接触する必要がないため、細胞や生体試料へのダメージを低減できる点も大きな利点です。そのため、細胞操作、組織構築、微粒子分離、マイクロ流体デバイスへの応用など、幅広い分野での展開が期待されています。私たちはこの技術を生物物理学の未解決問題に適用すべく、研究を行っています。


戻る